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創芸バトル戦 準決勝結果発表
覆面ジャッジ: 熾烈なバトルに春のにおいに浸る時間がありません。

●準決勝第1試合結果発表/覆面ジャッジ

木爪さんVSポッポさん

木爪さん/「おいしい生活」の糸井重里はブイヨンという名の
      ジャックラッセルテリアを飼っている

 まず、キッチンで鍋を前にした新婚夫婦のじゃれあいが、なぜに表題と絡むのか。
それは「おいしい生活」というCMキャッチフレーズが、作者が物語へ向ける着地点そのものだからなのか。

 物語は、身重の妻(おそらく専業主婦)の料理に愕然とする夫。それから、えんえんと夫婦は料理素材の掛け合いに終始してゆく。

 その煩冗さを終結させるのが、彼女の生い立ち。だが、そこに物語のレトリックが存在していたとしても、これは唐突にうけとめられた。

 作者は、お題の『野菜スープ』にたいへん苦慮を強いられたのだろうか。前半、ほのぼのとした鍋のあったかさが後半では、夫の実家との確執、妻のルーツ。そして、結婚に対する夫の向きあいかた。怒涛のごとく鍋のなかをゴチャマゼにする。美食家(微書家)としてあえていわせていただきたい。鍋(物語)のなかに選択する素材(設定)の扱いが杜撰ではないのか。

 夫は鍋のなかに沈む妻の人生だけをじっと見るのではなくて、そのお腹に宿る生命をどう育むか。あるいは『ゴチャマゼ野菜スープ』をいかに生まれてくる家族のために愛情のスパイスを振りかけ、『家庭の野菜スープ』に仕立てあげるのか。そのおもいを胸に、食卓へ向きうべきではなかったのか。

 追記、作者は前作でも妊婦を登場人物に配置している。このことには、特別なおもいが付加されるのだろう。と推測されるが、とてもナイーブな設定だけに物語の素材を上手く仕立てあげるスパイスの役割が作者はおろそかになった。そんな印象をワタクシは持ちました。

★評価/微妙3点


ポッポさん/スコール

 まさに作者はスコールのなかを怒涛に奔り抜けるような物語を展開した。
躍動しながら網膜に焼きつく風趣といったものは『動』である。流れる、揺れる。ところが、そのことで実体が曖昧になる。だが、主人公が奔りぬけている躍動感といったものは躯に染み入る読感として残る。

 さて、そのなかで紡ぎ出される男と女の物語は、暴力による流血によって、
とてもショッキングな世界を開き見せる。だがその表現のなかには過激な場面だけが筆写され、登場人物の内面が浮き彫りにされていない。
 これは、とおもわずワタクシは前作を読み返した。……続編なのか?
 そのような認識のもとでなければ、物語のウラにひそむ暴力を剥き出しにする要因が探せない。なぜ『ありさ』はアル中のDV男とつきあっていたのか。読み進めるなかで登場人物へ感情を移入する要素が探せない。
 男はスコールの激しさで、視線をぐちゃぐちゃにされたのか。だが、最後に男が『乾杯』と叫んだ空には、天道様が座しているのである。晴れ晴れとしているのである。

 まさか、決勝の作品がその答えを用意している? 『春の闇』→『卒業』
とくれば、次回は『……』ではないか! そこにこの難解きわまる三部作は終結を見るのか!

★評価/微妙3点

 両氏の作品評価がタイブレイクとなりましたが、次作を読みたいというワタクシの渇望で、ポッポさんが決勝進出となりました。



●準決勝第2試合結果発表/覆面ジャッジ
オチツケさんVS天上天下唯我独尊だおさん

オチツケさん/ 陽は昇り桜が舞って少年は歩く

 高校卒業式の朝。少年は、式をボイコットしてサッカーの朝連をしていた。
そして練習相手の実業団サッカーチームゴールキーパー(おそらく)と別れ、
学校の桜の木の下で校歌を口ずさむ。

 主人公、秀夫の行動はたんたんと書かれるが、その心情までは踏み込んで書かれない。学校と秀夫のあいだにどんな関係があったのだろうか。
『なにかが終わるんだという漠然とした感慨があった』というおもいだけが物語の最後に秀夫が吐露するだけである。

 お題は『卒業』さて、これはなにから卒業する物語なのか。再読してみた。そこに隠れているのは吉松さんとの関係なのだろう。ワタクシにはそのことしか読みとれない。し、解釈できない。
『……無性に吉松さんについて行きたいと思った。……』このおもいは物理的に同じチームでプレイするということではなく、心情的に吉松へ憧れたおもいがそういわせた。そうワタクシは理解した。

 この物語は、淡いBLから卒業する少年の話なのである。
 それ以外読みようがないのである。少年のおそろしくナイーブな、まるで桜の花びらのような存在を作者は筆致を押さえながら書き切った。そういう話なのである。

 冒頭、吉松は少年にいう、『しかしおまえもほんとにサッカー狂だよな。社会人に混じってまで球蹴りしたいなんて』秀夫は社会人チームへ進む。だがそこは吉松のチームではなかった。このおもいが、少年の『卒業』なのだろう。おそらく、まっとうに(?)生きてゆくための決断なのだろう。

 追記/暴風雨の後、桜の木に花びらは残るのだろうか。桜の木に花が咲けば、もう充分に春といえるのではないだろうか。朝の九時前に店先で話しこむおばちゃんたちは、強引な描写ではないだろうか。瑣末なことで申しわけありませんが、以上、三か所の表現が気になりました。

★評価/普通6点


天上天下唯我独尊だおさん/

 先行作品と真逆で、主人公の行動、心情を具体的に書き切った。そのことで、物語はすんなりと咀嚼することができる。わずか、レトリックを駆使したセンテンスもあったが、ラストの衝撃に向かって一気に書きぬけたようにおもえます。

 セリフも主人公の独白にとどめ、「最後に行きたいとこあるかい」と「ガッコー」の二カ所に留めるなど、憎らしい演出も盛り込んでいる。そして、娘の髪に鋏をあてながらテレビが伝える娘の殺人事件を耳にする父親の心情を深く浮き彫りにすることもない。おそらく『ジョギリ』と『パチン』で充分なのであろう。

 ひとつ、不満があるとすれば娘を殺人者に仕立てあげる必然性。恋人である脚本家に裏切られたという設定もなにか手あかのついた安易さが感じられた。冒頭から、きっちりと物語を紡いできたことで、新鮮な結末があるのかと期待したことが、わずか裏切られたふうにおもう。そう感想を述べるのは贅沢なことなのだろうか。

★評価/普通6点

 うおっと。気づけばこの対戦もタイブレイクとなった。そのことが文芸部員諸氏に安易と揶揄されるのか。四作品を再々読したが、結果にぶれはなかった。

 さて、この対戦。お題は『卒業』と『春の闇』だが学校、雨、桜の要素がそれぞれの作品に抒情性を添えていることはおもしろい。昨日から。じぃっと逡巡しましたが結論が出ません。よって、申しわけありませんが、鉛筆判定です。

 決勝進出はオチツケさん。
 審査方法には、ご不満が多いにあるでしょう。この件は秋吉審査委員長にゆだねます。ワタクシの心情としては引き分け僅差ということでオチツケたい。


2014/03/16 (日) 10:56 公開
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感想・批評
覆面深読みし過ぎててワロタわw
あと鉛筆判定てw
覆面いいよ、気に入った!肯定10点!
1:  最高 10点 <Q00/2xlX>  2014/03/16 (日) 11:08
ポッポ
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