「月子」の理由 |
月子祭り参加作品 |
月子は、ゼロ年代後半に現れたおにゃのこコテ(自称)。メジャーな文学賞の最終選考に残ったこともある(自称)実力者であり、特に米文学に造詣が深い。その実力とキャラで、故罧原堤とともに、後期アリの穴を大いに盛り上げた立役者である。 綺羅星のごとく登場した月子は、アリ住人の好奇心を大いに掻き立て、アリ住人により、「上智大卒」、「IT会社勤務」、「東横沿線在住」などといった情報がまことしやかにプロファイルされたが、その当否について彼女は頑なに口を閉ざしている。登場から数年が経っても、未だアリ関係者の中でリアルの月子について、知っている人はいないように見える。 月子を名乗る何者かは、アリ住人とのリアルなコンタクトを周到に避けていた。それは個人情報の流出や恋愛絡みのトラブルの回避といったセキュリティの面から賢明な態度だと思うが、その態度にはセキュリティへの配慮を超えたものがあるのではないだろうか。 秋葉原で凶行を犯した加藤智大(おそらく月子と同年代)は、ネットの掲示板のリアルでは知らない連中に抗議するためにやったとかなんとか言っているらしい。私のような中年には、会ったことのない人のために、何らかの行動が取れることが理解不能である(むろん、動機がどうあれ、あのような行動を多少とも理解することは難しいが、その動機が絶望的に理解不能にしている)。私には、匿名の誰かのために行動を起こすことはできそうもないし、ネットの掲示板だけのやりとりを続けるという感性がない。相手次第で、物理的に会うことが可能なら、会う用意がある。 しかし、月子は私とは異なる感性があるように見える。彼女には、ネットの人間関係をそれ自体で独立して保持できる感性があり、テキストのやりとりだけでも、十分に楽しめるのではないか(それは十代の頃からネットに慣れ親しんだ若者の感性だろう)。それともやはりアリ住人の特殊性(実際はまともな人もいるだろうが、投稿作品から常軌を逸した輩も少なくないと警戒させるものがあった)のためなのかもしれないが、いずれにしても、月子はリアルには降りて来そうもない。だから、「月子」なのか。 |
2015/06/08 (月) 09:59 公開 |
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