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天使と悪魔
山田
 人を殺したいと思ったのは初めてのことだった。それまでの人生でこれほどの憎悪がわいたことはなかった。自分の中にそれほどの強い感情があるなんて初めて知った。わたしは今まで他人に怒ったことが一度もなかった。馬鹿にされてもからかわれてもいつもへらへら笑っていた。そのせいで天使の山田というあだ名がつけられたほどだった。

 やさしい性格だと、そう周りには思われている。あの人はいい人だと。でも本当はそうじゃない。自分の感情をおもてにどう出せばいいのか分からなかったのだ。だから必死に自分を抑え込んだ。それにいつしか慣れてしまい、どんなことをされてもほとんど感情を動かすことがなくなった。だから、いつも適当に笑って話を合わせて流すことができた。 
 でも今回はちがった。彼女のたった一言がわたしの逆鱗に触れた。「山田さんってバナナマンみたいな顔しているわね。ハーフなのに」わたしはその言葉を聞いた瞬間、メキシコ人プロボクサーだった父の血が体の中で熱く沸きあがった。私は彼女の顔面を殴りつけた。正確なワンツーを顔の中心に叩きつけたのだ。
 隣の机と一緒に派手に倒れた彼女は何が起こったのか分からないといった顔でわたしをみつめた。その鼻からは鮮血がぼとぼとと流れていた。それまで突発的に人を殺す人の気持ちがまるでわからなかったが、今ならなんとなくわかる。人間には人殺しのスイッチみたいなのがあって、今わたしはそれがONになってしまったのだ。
 鼻血を垂れ流している彼女はやがて顔を押えて泣きじゃくり始めた。わたしはその頭に前蹴りを決めた。彼女の頭は椅子のパイプの部分に鈍い音をたててぶつかった。すすり泣くようだった鳴き声は叫び声へと変わり、「タスケテ、タスケテ!」と周りの生徒たちへ助けを求め始めた。わたしはすがりつくように手を伸ばした彼女の指を握り、思いっきり折ってやった。叫び声が教室を包む。

「暴力ってなんてすばらしいのだろう。他者に向かって自分の感情と意志を刻みつけるという表現行為。私はもっと自分を表現しなくっちゃ。」とわたしは天に向かって誓ったのだった。それからは私は悪魔の山田とよばれるようになった。

2015/10/04 (日) 21:47 公開
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感想・批評
どのように感想するべきか、正直迷いました。
語りによる説明がほとんどで、想像の喚起はありませんでした。(読み手として)
厳しく言うと。
書いている内容は理解できます。が、それだけです。

肝心要の暴力シーンも、淡々と説明があるだけ。では、読んでいて辛いです。
もうすこし、読者の想像力を意識されたらと思いました。
1:  <irGC9T0p>  2015/10/06 (火) 23:57
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