サイレント・クリスマス |
今年のクリスマス・イブのセカイは異常な状態だった。 政府、知事たちは家庭で過ごしてと言っていたので、僕たちも家で静かに過ごすことにした。 例年だと、ホテルのフレンチだった。 僕は基本的に在宅勤務になっていたが、出社する用事があったので、オフィスへ時差出勤で行った。 先週からオフィス出社時は時差出勤でラッシュアワーより遅い時間、早い時間の電車の空いている時間に会社が決めていた。 僕は在宅勤務でさぼらず仕事をこなしていたので、オフィスでは最低限の打ち合わせしかしないので遅くに出勤して、早く退勤していた。 一応、ホワイト企業なのでオフィス出勤時も短時間勤務で問題なかった。 成果さえ出していれば、誰にも文句言われない。 それに在宅勤務をしていると、結構、夜遅くまで仕事をしていたりして、オフィス出勤時と相殺できた。 オフィスに出勤して、打ち合わせすべき同僚と打ち合わせをした。 オフィスは閑散としていた。 経営層も波が荒くなった時から基本は在宅勤務に変更していた。 お客様のほうも同じような感じになっていて、自宅からリモート通話で打ち合わせをしていた。 それで止まるような仕事ではないと言うか、それは高度に情報化された資本主義の姿だった。 日が暮れ始めた頃、もうオフィスでやることもないので、駅に向かった。 電車は空いていた。 地元の駅について、商店街を歩くと、暖かい光があふれていた。 人はたくましいのだ。 食べないと生きていけない。 どのスーパー、食料品店もそれなりににぎわっていた。 僕は妻に頼まれていたクリスマスケーキをケーキ屋に取りに寄った。 クリスマスケーキは予約しておいたので、用紙を渡して、スマホで支払いを済ませた。 ここでちょっと思いはじめた。 ケーキは僕がおごることにしたが、これだけではなにか寂しいなと。 チキンは妻が買ってくることになっているので、これは買ってはならない。 シャンパンは既にAmazonで買ったものを冷蔵庫で冷やしている。 妻になにかプレゼントでもあればいいのだがと。 とは言え、ここは私鉄の駅前商店街。 そんなにしゃれたものはない。 ちょっと商店街を歩くことにした。 普段は僕はあまり入らない小物屋の店頭にプラスチック製のシンプルなクリスマスツリーが飾ってあった。 なるほど、これがいいかなと思い、店に入った。 店に入りクリスマスツリーを手に取り、店内を見渡した。 するとローソクが目に入った。 なんでも7色に燃える新しいローソクと言うことだった。 ビジネスニュースでたしか見た覚えがあった。 これはいいかもしれないと思った。 僕は家に帰ったが、妻はまだ仕事から戻ってきていなかった。 妻も仕事をしていた。 妻をびっくりさせようと思った。 リビングのテーブルにケーキを置き、ローソクもテーブルに置き火を点け、そして家の電気を消した。 妻がドアを開け、真っ暗なので、声を出した。 「ただいま。まだ、帰っていないの?」 妻はリビングのテーブルを見て、「あなた、かわいいことするわね」。 妻は気づいたようだった。 僕は言った。 「ディナーに入る前に、このままシャンパンを開けよう」 妻はリビングの椅子に座った。 僕は、シャンパンを開け、グラスに注いで妻に渡した。 そして、二人で「メリークリスマス」と言った。 妻は言った。 「ねぇ、ディナーを食べる前に私を食べない?」 そして、僕の唇にキスをしてきた。 僕は、「最高のディナーだね」と言った。 静かなクリスマスもいいものだ。 |
2020/12/25 (金) 06:14 公開 |
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感想・批評 |
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2: 微妙 1点 <XNIJBKx5> 2020/12/31 (木) 09:42 |
1: <1hjvtXve> 2020/12/25 (金) 19:39 ひやとい |
アリの穴が健在だった頃に、たまに上がっていた空虚な世界観を共有しているとは思う
臭いも手触りもない空虚なのっぺらぼうのストーリー
見るべき文章もなく、コロナ禍の中で書き下ろされ、やや時代を反映しているのが唯一の美点か