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踊るあの子はコン 第一話
オオバ: 昔の書き直しを投稿
 彼女とさくらんぼのような甘酸っぱい同性生活を送っていたが、ひょんなことで友人から不倫疑惑を聞きだし、問い詰めようと思った矢先、彼女が事故死した。
 目の前が真っ暗になった。これまでのこと彼女の僕に対する愛が嘘なのかとか、そういう真実が突然途切れた。
 僕は発狂した。止まらなかった。脳裏が真っ白だった。顔中の筋肉がぴきぴき力いっぱい硬まった。体中からパワーが底なしに現れ、外に出さないと死んでしまうのではないか、という程までに直面した。これが僕の今まで彼女を愛していた、その愛の裏返しなのか? 僕は全力で家の中のものを壁に投げつけた。恐ろしい奇声をあげて。異変に気づいた隣近所の住人が警察を呼んだ。少しして、警察官が来た。彼らは僕を取り押さえると、よせばいいのに僕は奇声をあげて手足を動かして暴れた。
 そんな経緯を経て、僕は精神病院に入院させられてしまった。
 病院の中で最初は四角い部屋のなかにずっと入れられ、暇も最初はまぎれたが、だんだんと考えることもなければ、身体をやすめるにもはなはだ万端すぎて、苦痛の時間を過ごした。そしてこの生活は一週間過ぎた。
 部屋を出れるときは、出歩くスペースの獲得に喜んだ。はじめて病院のなかで他の患者を見た。どの患者にも通じるのが目がうつろなことだ。これは、なんなんだ。薬物投与のせいなのか、怖い世界だ。ここに長期滞在するのは怖くなった。自分もこうなってしまうのではないか。自分の運命の起因が、突発的なものだったため、後悔した。こんな思いをするため生きているのではない。しかし、病院のセキュリティの体制は万端そうだ。どうやって逃亡すればいいのか。僕は看護師の前に、一つの爽やかな顔と裏に出し抜く顔とふたつ用意した。
 しかし日が過ぎるが、隙を見いだせなかった。そして数週間が過ぎ、外出許可がおりた。病院の場所はド田舎で、コンビニすら近隣にない。バス停があるが、金を持たせてもらえないので使えない。到着時刻を見ると、二時間に一本しかこない。
 山の散歩コースを歩く。何度も亡くなった彼女の顔があたまによぎる。主治医からは欝だと診断された。この状態を治すには、新しい彼女を見つければそれで済むのではないかと思うが、先生はかたくなに薬物療法をかかげ、折れなかった。確かにそうだ。病気を抱えたまま、外に出れるわけじゃない。
 坂をのぼり、開けた草むらに着くと、キツネが一匹いた。
「コン」
 毛並みが太陽の光を受け、黄金色に輝いている。
 僕はなにか苛立ちを覚えた。くそ。
 地面の小石をつかみ、投げつけた。
「コン」
 キツネは石が当たる前に後ろに返り、森の中に消えた。
 その日の夜、僕はこの生活に精神的に限界がきていた。そしてそれがエネルギーとなり、逃走計画を思いつき、実行した。ぼくは絵が描けた。看護師の似顔絵を鉛筆で描いてわりと好評だった。それで僕は水彩絵具を街まで買いに行きたいと言ったら、日頃の似顔絵を喜ばれているのが手伝って、あっさり許可がおりた。
 僕はベッドに入って修学旅行の生徒のように心を弾ませた。今夜は仏の顔のように世間のしがらみに解き放たれたように安らかな顔をして眠れそうだ。僕は枕の上で動物園を想像した。灰色の大きな象がいる。象は身体が大きいから心も大きいけど、檻の中に入れられとってもストレス。あるとき大地震が起きた。それは神様の恵みだった。そして象は動物園を抜け出した。自由を得たわけだ。そのあと象がどうなったのかは知らない。周りは人界だから象も大変だ。そこから先を思い描くのは眠くなったからどうでもよくなった。僕はぐっすり眠る。
 つぎの日起床して朝食をとるとラジオ体操をして、外出ができる時間まで待った。――そして時間がきた。
 僕は五千円持って病院を出た。街まで往復するのに二千円かかる。まあ、もう戻ることはないけど。
 バスがきた。踊るようなステップで乗り込み、街に着くまで、僕は高級リムジンに乗っている心持ちで静かに外を見ていた。街に着くと、僕は電車に乗り換え、出来るだけ遠くの地を目指した。病院を逃亡したのがバレて、捜索願がだされ、警察に捕まらないように。そして適当な街で降りた。
 もう病院に拘束されずに済むのだと思うと、世界がきらびやかに輝いたが、ひとつ問題が浮上した。それは『どうやって飯を食って生きていくか』である。僕は悩んだ。お金はいずれ尽きる。どうするか。どうして生き残るか。現金を確かめると、もう病院まで戻れない。気づいたとき、世界が残酷に色を失った。まるで突然マンホールの穴に落とされて、下水道におちた気分だ。
 僕はよろめきながら、この街の児童館に足を踏み入れた。無意識にすいよせられるように。きっと、元気な子供を見れば、元気になるんじゃないか。
 自動ドアが開いた時、親子とすれ違った。子供はやはり元気である。しかし僕には子供が自分とは存在が根本的に違う異種なる生き物に見えた。やはり子供のようにはなれない。
 僕は階段に腰をかける。そして頭を両膝の間に挟む。僕の未来は華やかな色を失った暗黒色。自己嫌悪に陥り、自虐的な言葉が雷雨のように自分に降り注ぐ。僕はもう、ドコカデシンデシマイタイ……。
 その時、パシャッという音とともに真っ白な光が僕を包み込んだ。一瞬、魂が抜かれたのか惚けて、そして気がつくと、一人の女性が、カメラを持って口角いっぱいに笑みを広げ、
「その顔いいね」
 と、僕にウィンクした。
「はぁ、どうも……」
 僕は頭をかいた。

2014/04/09 (水) 21:57 公開
作者メッセージ
歌詞ばかり書いているうちに小説が書けなくなってしまった。
リハビリとして昔の書き直し。
この作品の著作権は作者にあります。無断転載は著作権法の違反となるのでお止め下さい。
 
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感想・批評
すごく中途半端なところで終わってませんか
1:<HO7U4V/A>
2014/04/10 (木) 18:10

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