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あの初夏の夜、海に行きたいと君は言った
ランダカブラ: 第二回創芸戦 一回戦グループB
 「たくさんのかわい子ちゃんが並んで……うわっ、キモッ……彼女が売春婦を切りつけたのはどの夜だ?」
 ……何のことだか全くワケがわからない。僕は今、スーパーパーソナルコンピュータ(以下SPC)の前に座っている。そして奴が出した不可解な答えを訝っている。検索したのは、「2015年5月 2ch文芸部 トーナメント お題」 奴は何でも知っている。SPCは、グーデンベルクの印刷機以来の人類のコペルニクス的転回、ガリレオの業績よりもコロンブスのアメリカ大陸発見よりもはるかにパラダイムシフトな、いわば神の領域を侵犯した発明である。だから奴は、この祭りで優勝した者が、1つ前の元カレ元カノ祭りにおいて、ひとつの山を覆った広大なナラタケのDNAの奥底にに刻まれた、切ない男と女の恋物語について書こうとしていたことも知っている。そしてそのナラタケのDNAに記憶された、人類ならず全ての生き物の進化の歴史と恋愛感情と宇宙の真理に関してだって知っているし、その中からどんな情報でも抽出することができる。だから奴が間違うことなど有り得ないのだ。

 日中の照り返す日差しも落ち着き、アスファルトはひんやりとした冷たささえ取り戻した初夏の夜だった。2015年の高校生の僕は、学校で出された創作文芸の課題に頭を悩ませながら、近所を徘徊していた。昼間はよくスケーターが集まる広場の、やや高めにせり出したコンクリートの一角に並んで腰かける女子高生の集団が目に入った。1人の女が彼女たちに対し、「誰が売春したっ? えっ、一体誰だ!?」と叫びながら、丁度手の高さにある脚や太ももに向かってカッターナイフを振り回している。そこで女が聞き取れない言葉を何か叫び、それが癇に障ったのか集団は一斉に女に反撃を加える。形勢はめまぐるしく逆転した。どうやら女が発した言葉がそれだけは言ってはならないものだったらしい。カッターナイフの女は売春婦たちに蹴られ、殴られ、奪い取られたカッターナイフで切りつけられ、女性器を破壊されるのだった。それを見た僕は激しく戦慄し、そして射精した。

 スーパー暗号解読プログラムを立ち上げると、SPCが出した答えを打ち込み、暗号解読を試みる。……ブーン。待つことおよそ0.00001秒。そこに表示された文字は、「so lay ducky wow eww what night day whore she cut at」 一体何が起こったのか。この英語は何なのか。僕はコンピュータを使って調べることは得意だが、英語は苦手だ。文法的に出鱈目ということくらいしかわからない。そこでスーパー翻訳機にこの文章を打ち込んでみた。……ブーン。そして0.00001秒後に出た答えは、 「たくさんのかわい子ちゃんが並んで……うわっ、キモッ……彼女が売春婦を切りつけたのはどの夜だ?」 何てこった。また振り出しへ逆戻りだ。途方に暮れた僕は、あてどもなく英文を音読してみる。そぅれぃだっきーうぉう、いーぅわっないでぃ、ほーしーかったっ。……っ!? そ・れ・だ・け・は、い・わ・ないで・ほし・かった? 何だ、そういうことか。分かってみれば、至極真っ当な行き違いだ。
 以上の文章は、文章自動生成装置の知的レベルを「2000年代の高校生」に設定して生成されたものである。
2015/05/24 (日) 00:28 公開
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