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月子ロス症候群
ミラ: 月子祭り参加作品
 月子が創作文芸板から姿を消してしばらくの間、俺は気が抜けたようになっていた。仕事も手につかず、食事もろくに喉を通らなかった。俺にとって月子がどんなに大きな存在だったのか失って初めて分ったのだ。しかし全てはもう遅い。月子は二度と創文板に戻ってはこないだろう。そう思うと俺はどうしようもなく辛く悲しかった。
 ついにある日、憔悴しきってやつれ果てた俺を見るに見かねた友人によって、とある心療内科へと半ば強引に連れて行かれた。
「愛情の対象を突然失ったことで感情の行き場が無くなってしまい、それが精神と身体の両方に不調となって現れたのです」
 そう医師は診断を下した。
「ペットロス症候群という言葉を聞いたことはありませんか。あれとほぼ同様の症状です。あなたの場合は差し詰め『月子ロス症候群』とでも言ったところでしょうな」
「はあ」俺は力なく答えた。「で、どうすればいいんでしょう」
「ペットロスの場合は新しいペットを飼えば簡単に治るんですが、あなたの場合はそういう訳にはいかないでしょうな」
 医師は腕組みをして暫し考えていたが、やがてこう言った。
「ちょっと荒療治ですが、あなたの記憶に残る月子さんを、あなた自身の手で改めて葬り去るしか方法はないでしょう。そうすることで思いを断ち切ることが出来るはずです」
 おれは医師の催眠誘導に従い、頭の中に月子のイメージを思い浮かべた。もとより月子の外見など俺は知らなかったが、それでも暫くすると若く美しい女性の姿が俺の脳裏にくっきりと浮かび上がった。
「つ、月子! 君は月子だな」俺は叫んだ。
「そういうあなたは○○さん? 会いたかったわ!」
 月子があるコテの名前を呼んだ。俺の嫌いなコテだった。
「違ーう!」
 俺はいつの間にか手にしていた槍を月子の体に突き刺した。
 ふと気がつくと俺は診察室に戻っていた。
「気分はいかがですか」
 医師の問いかけに俺はにっこり笑って答えた。
「とてもすがすがしい気分です」
 というわけで俺の心の病は、月子を突き殺すことによって完治したのである。『月子ロス症候群』だけにな!
2015/06/05 (金) 00:37 公開
2015/06/15 (月) 01:30 編集
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現在のPOINT [ 68 ]
★★
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感想・批評
纏まりはあるが、文章がオチに近付くにつれ先細り感があるような
10:<GM9ZFss9>
2015/06/14 (日) 17:56
普通 4点
にょろ。
7さん、8さんと同じ感想になっちゃうなー。
過不足なくって瑕がないってのが第一印象。
枚数と内容のバランスがよく、スッキリ読めました。
月子が名前を間違えて刺し殺すまでをわずか数行で済ませる技量に感服。
そして迎える駄洒落オチ。
それ以上でも、それ以下でもないところが、良くもあり悪くもありますねー。
1000字祭だったら間違いなく推しメンでした。
9:<vbERsgt7>
2015/06/14 (日) 17:25
好感 7点
最後のオチが秀逸だ。
文章の完成度も高く、オチを引き立てている。
ただ何度も読み返す作品ではない。
それが物足りないといえば、物足りない。
駄洒落以外にも心を打つ何かがあったら。
8:<mdFtazNw>
2015/06/14 (日) 17:08
好感 9点
起承転結が明確かつ詰め込まれた情報にも過不足ない、オチめがけて一直線なssのお手本のような話。
内輪受けな感は否めないが今回のネタがネタだけにそこはしょうがない。
逆に馬鹿馬鹿しいオチさえ思い付けばそこから逆算していくらでも同じような話を書けそう。
まあ思いつくかどうかという事こそいつだって問題になるなのだろうけど。
7:<aWJRPXHw>
2015/06/13 (土) 19:41
好感 7点
アイデアが良かった。
6:<4tNmgK0c>
2015/06/13 (土) 13:05
好感 7点
駄洒落オチかーと思いましたが、文章も巧みでスピード感もあって一気に最後のオチまで読めたので好印象です

5:<VVelSYfe>
2015/06/13 (土) 00:59
普通 6点
バカだねえ、実にバカだよあんたは。
でも面白いね。
でもでもバカだね。
でもでもでも、「月子」は「つきこ」じゃなくて「げっし」なんだなこれが!
それくらいしかイチャモンつけられない!最高!
4:<aPF659fC>
2015/06/12 (金) 00:37
最高 10点
 五枚までの規定枚数で、三枚で終わっていると言う事もあり、思いつきのコテ内輪ネタで終わるのかと思いきや、軽快な文章で、最期まで読ませる。
 オチはいわゆる「にわか落ち」とも言う駄洒落落ちで、綺麗に落ちていると思うのですが、個人的に駄洒落落ちというのは好きではないと言う事と、この月子祭りの前にやった祭りでも駄洒落落ちがあり、続いて読んでいると言う事もあり、あまり駄洒落落ち自体に魅力も新鮮みも感じなかったと言うところがあります。
 それでも、物語自体の完成度は高く、一発ネタとしては良かったと思います
3:<o74FO2Gn>
2015/06/08 (月) 21:52
普通 5点
いわゆるショートショートのアイデア一発ネタで、後はアイデアを読んだ人が気に入るかどうかの世界。

1の人も書いている通り、この手の小説に小難しいことを期待すべきではないし後は“はは”と読み手が笑ったかどうかだけが評価のポイント。

個人的には月子だの嫌いなコテだの、よくわからず全体に内輪受け臭がキツく笑うことはできなかった、というのが正直な感想。
(ただこれはテーマ設定者の責任が9割だろう。自分の名前をテーマにするなど少しは恥じらいというものを知っていておいて欲しいと新参者は思う)

まぁ、ネットの片隅の掌編に世界の広がりを求めるのも筋違い。
まずは最初に投稿をされた点も含めて、良い評価をしたいと思う。
※基準点として6をつけます。

2:<DjuVN37e>
2015/06/08 (月) 10:51
普通 6点
「月子ロス症候群の俺」が、最後にどうなってしまうのか?
物語はそこの興味によって引っ張られます。
そしてそして、あっと思わせるラスト!
う〜ん、これには本当に唸らされました。
上手いです。何よりもギャグとしての切れ味がいい。
思わず膝を打つ、というのはこんな感じのことでしょうか?
作者さんの言葉のセンスが光る一作です。

さらに、
>「そういうあなたは○○さん? 会いたかったわ!」
>月子があるコテの名前を呼んだ。俺の嫌いなコテだった。
>「違ーう!」

ここは笑わせてもらいました。
欲を言えば物語の深みが欲しいところですが、この展開では無意味でしょう。
スマッシュヒットの痛快ギャグ一発作品です。
1:月子 <mBh.eOwx>
2015/06/05 (金) 19:55
好感 7点

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