バーテンと月子 |
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月子祭り参加作品 |
以前、ガールズバーに通っていたことがあった。そこのバーテンに気に入った子がいたからだ。僕のお気に入りの子は、Mという大学生だ。外見については詳しく書かないが、可愛い方だと思う。ハンドボールをやっていて体格が良かった。 最初は、話せればそれだけで嬉しかった。しかし、やがて相手のことが知りたくなってくる。こちらとしては、彼女の日常についていろいろと訊きたい。だが、はぐらかされてしまう。当たり前だ。飽くまで客と店員という関係だから。知り合うことを目的としていない関係だ。好きな酒や仕事の話などが、彼女にとっては理想的な話題ではないだろうか。そうした話では、プライベートな事柄を話す必要がないから。僕はそうした会話の限界を感じ、足が遠のくようになった。 Mのことが創文版の月子のイメージとダブルのは、月子もバーテンのような特定の状況のキャラのように思えるからだ。創文版に特化したキャラではないだろうか。つまり、他にもリアルの月子だけでなく、twitterやFacebookのキャラがあるだろう。SNSにアカウントを保持していれば、自ずとネットでのキャラを演じることになる。 ネットを通して、コミュケーション能力を飛躍的に高めながら、プライベートな部分は秘密に維持できため、ネットへの適応力やコミュケーション能力が優れている人は、ネットで複数のキャラを演じられる。その結果、新しいタイプの人間関係が生じるように思う。月子とアリの住人の関係は何だろうか? 知り合いではない。しかし、まったくの他人ではない。お互いのことを何も知らないが、書き込みや作品を通して知っている関係。MMORPGの知り合いに近いのではないだろうか。 プレーヤーが優れていればいるほど、キャラを通した遊びは楽しいと思う。創文版の月子はゲーム感覚で楽しんでいるように見える。しかし、月子にとってはゲーム感覚だとしても、それは合意事項ではない。リアルとネットの相互浸透を前提とする人は、中の人に行き着けると考えるかもしれない。 といっても、月子にその気がなければ、アプローチを断ったり、無視すれば良いだけだ。身バレのリスクはゼロではないとしても低い。ただ、僕としてはそういうキャラを通じた関係に留まることの理由(もしあれば)がよくわからない。2chで楽しければ実際に会ったらどうなのだろうかと思うのは僕がネット世代ではないからだろうか。まあ、リアルで会う理由も通常は馴れ合いでしかないが。 バーテンが客とのプライベートでのコンタクトを避けるのはわかる。バーテンは金銭を稼ぐためにやっていることだから。客とのコミュケーションは、仕事の一環にすぎない。しかし、月子は趣味としてやっているのだと思う。しかもライトユーザーではない。そのような態度とキャラとしてテキストだけでやりとりするという態度が、僕には両立しないように見える。 月子はたぶん誰も騙してないし、個人情報を開示しないのも自由だ。だけど、今回の祭りを見ても明らかなように月子に恋着する人もいる。中には、月子をおっさんだと考える人もいる。そういう風に、人は中の人が気になるものである。これまでも月子を取り巻くさまざまな憶測がスレを流れた。多くの人(というか男)は、特に女性のキャラの場合、裏を取りたいと考える。それは騙されているのではないか、と不安になるからである。何らかの具体的な情報があれば、満足できる人もいるだろう。 いろいろ書いたが、月子にはアリ住人の前に姿を見せるか、その他何らかの方法でおっさんでないことを証明して欲しいものである。 |
2015/06/10 (水) 22:58 公開 |
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