批評家 |
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名無し |
「さてと今日も餌食はあるかな」 俺はネット小説批評家。匿名でやっているが、結構ネット界隈では厳しい批評をすることで有名。 カップ麺の空カップと空ペットボトルだらけの部屋だが、PCの周囲だけはスペースを確保している。 投稿サイトをブラウズすると、新作があった。 「お、新顔だな、まずは傷めつけないとな」 『小説として成立していません。作者のオナニーです』と書き込んだ。 いつも俺が書けばもっとうまいと思っている。でも、俺は天才だから、いつ書き始めたっていいと思っている。 俺はひきこもり。生活保護で生活している。統合失調症だ。でも、実際にはこれは嘘で生活に困った時、貧困保護系団体と一緒に精神科に言ったら勝手につけられたラベル。だから、薬は服用していない。酒も飲む。 幻覚も幻聴もない。なにしろちゃんと批評できるのだから頭も当然いい。 「さて次の獲物はと」。違う投稿サイトに行った。また、新作を見つけた。 「こいつ十年書いているとか言っているけど、伸びがないな」 「ストーリーがわかりません」と書き込んだ。 実際にストーリーがよくわからなかった。ってか、俺の知らない単語をいっぱい使っているし。漢字を全部読めない時点でマイナスだ。 翌週のことだった。朝寝ていると、ドアを叩く音がした。 「警察です、開けてください」 なんのことかと思った。 スーツ姿の男二人と制服の警官が二人いた。 「実はあなたが小説投稿サイトに書いた批評を苦にして自殺した方がいまして、この部屋を捜索させていただきます」 「これって創作ですよね? 創造して作るのほうの」 「いいえ、違います。ちゃんと捜索令状をお見せしましたよね」 「はい」 「それと生活保護のケースワーカーの方から相談を受けていまして、生活保護の詐取の件でも署のほうでお話を聞きたいと思います」 |
2015/09/25 (金) 04:57 公開 |
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