胡瓜 |
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質問男 |
『入れて欲しい。その脈打つ、堅くて太いモノを』 仕事をしている時、街を歩いている時――いつだって私はいい男を見るとそう思う。 私は性欲が強い方なんだろう。 適当に男を捕まえてエッチすればいい。そう思われるかもしれないが、私にはそれは無理だ。 私は醜い。そして何より、性格が内向的で暗い。 男と付き合うどころか、遊びに行くという事が分からない。遊ぶって何を? 男性と何を話せばいい? どんな格好をすれば恥ずかしくない? 私には何も分からない。大体、同性の友人すら皆無なのに、男性となんてどう接すればいいか分かる訳がない。 もしかしたら、私みたいな醜い女にも、エッチ目的なら寄ってくる男はいるかもしれない。でも、怖い。私は人間が怖いのだ。それは、学生時代、クラスでずっと無視されてきた事に起因する。 机にしがみついていただけの私。 そんな私が友達? 出来る訳がない。出来ない。どうすればいいか分からない。 私は男性と付き合った事が無い。 しかし、私は処女ではない。 私の乙女を突き破ったものは、胡瓜である。 胡瓜にコンドームを被せ、自ら貫いた。 怖くはなかった。性欲がそれに勝った。 初めてした時は、股間の痛みと、喪失感だけがあった。 それ以来、欲情した時は、胡瓜を手にする。 今日も手にするだろう。そして、自ら慰めるだろう。 胡瓜を股間の穴に埋めて、抽送を繰り返すと、キュッキュッと切ない快感が私の内部から訪れる。 頂に上り詰めた後、胡瓜は料理して腹の中に収める。 今日は胡瓜の酢の物でも作ろうか。 ――そうやって生きてきた。 それでいいと思っていた。 しかし、そうではなかった。 歳を重ね、私は四十歳を超えた。 性欲は減退してきたが、自慰は相変わらずよくしていた。 男を見る目が、若い頃とは変わってきた。 私は肉の棒にそれほど興味はなくなった。代わりに、触れ合いたいと思った。 抱きしめられたい。抱きしめたい。キスをしたい。肌の温もりが欲しい…… それは、胡瓜では到底得られないもの。 それを悟った時、私は泣いた。嗚咽を漏らした。 ふと、鏡を見た。 もう無理だ……ただでさえ醜いのに、加齢でとても女として見られないものになってしまっている。 私は、女として終わってしまった。 もう、過去には戻れないのだ。 私はのろのろと立ち上がった。 そして、長いスカートを穿き、地味な色のカーディガンを羽織ると、近所のスーパーへと出かけて行った。 |
2015/10/25 (日) 17:35 公開 |
作者メッセージ
一年ぶりに小説を書きました |
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