ひとり遠距離恋愛祭り・後編 |
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ランダカブラ |
▼マサオと月子のとりとめのないやり取りは昼夜問わず四六時中続いた。またビデオチャットも始まった。そこに映った月子の姿はマサオを虜にした。絶世の美女ではないが、透明感のある薄幸美人で、また液晶ディスプレイの粒子を通じてもわかりそうなきめ細かい肌質に惚れ入った。マサオはもう月子のためなら何でもしてやれる、と思った。万を持した月子は200万円必要だと言った。なければソープに沈められると。その金額はマサオを悩ませた。 ▼職を失って大麻草を50株没収されたマサオにもはや金稼ぎの手段はなかった。考えたのは麻薬の密輸だった。LSDの前駆体を薬品商社を経由して輸入し、自前で最強のキマリと曲がりを持つ最終段階へ仕上げた。コンサイニーはもちろん、2ch文芸部随一のマッドサイエンティストであり薬学博士の資格も保有するリアルガチ高学歴エリートの秋吉君だ。秋吉君にはマージンとして、大好物の食用ガエルを現物支給しているから、何も問題なかった。 ▼そうやってコツコツと額に汗し稼いだ金を、月子の本名である「イタヤゴシ・ジェニファー」の口座に振込み胸を撫で下ろした。……やれやれ、これで月子、いやジェニファーはソープで働かずに済み、俺と一緒に毎晩セックスに明け暮れる新婚生活が送れる。そう考えると、もう陰茎がどうしようもなく熱くなりはち切れんほどに膨張し、たまらなくなって外へ飛び出した。むちむちの太ももに20デニールほどの黒ストッキングを吐いた股間目掛けてイチモツを突き刺そうと手に取ったが、すんでのところで女の尻を交わし、ボトムスの中へそのまましまい込んだ。その足で新地へ行くと、立て続けに3人抱いた。 ▼いよいよジェニファーと会うその日が来た。マサオはジェニファーのことを微塵も疑っていなかった。ビデオチャットであんなに色々な表情、自分にしか見せない表情を見せてくれたし、ライブカメラ越しで鮮明なマイナンバーカードの映像も確認している。アイスランド系ベネズエラ人と日系シエラレオネ人3世を両親に持つジェニファーが散々苦労したのも今日で終わりだ。そう考えながら、指定されたアパートのコンクリート板を並べただけの、ソールが堅いと乾いた音を鳴らす階段を登った。 ▼待ち合わせ場所はジェニファーの自宅だった。彼女はご馳走のディナーを用意して待ってると言った。インターホンを鳴らしたときのマサオの胸の高鳴りは最高潮だった。しばらくの時間が経ち、それはマサオにとって100万光年にも感じられた。どうやら出てこられない状況らしい。マサオはドアノブに手をかけた。すると鍵がかかっておらず、ドアは開いた。マサオは面食らった。それはジェニファーがいるかどうかではく、そこら中にジグソウが仕掛けたような罠が張り巡らされた空間だったからだ。次の瞬間、足の自由が奪われた。やられたと思う間もなく、真っ暗な宇宙空間に投げ出され、いくつかの明るい星が輝いた。やがてそれらは十字型に整列しグランドクロスが形成された。その中心に龍のような姿が浮かび上がり、それはよく見るとイグアナだった。イグアナはマサオの頭に直接、チェロのような音色で語りかけた。……我は天慶・フェルマーダイン・ンゲラポポビッチぞ。マサオはジェニファーのこととかどんなに苦労してお金を稼いだかとか、ここまで来るのにどんなに胸を高鳴らせたかなど語る必要はなかった。全てそれは天慶・フェルマーダイン・ンゲラポポビッチの知るとこだったし、何しろ全てはそのイグアナによって仕組まれたことだったからだ。コンピュータへ特殊な電波を送り、それをブロードバントを経由して映像信号としてマサオのコンピュータへ転送すれば造作もないことだった。怒ったマサオは天慶・フェルマーダイン・ンゲラポポビッチへ拳を振り上げた。天慶・フェルマーダイン・ンゲラポポビッチは口を開けると破壊光線を出し、マサオを一瞬で灰に変えた。 ▼灰になったマサオは宇宙を漂っていた。そしてある星にジェニファーの姿を見た。制服を来て、マサオと手が触れるか触れないかの距離で、机を挟んで話をしている。灰となったマサオを宇宙の塵となったそれぞれの元マサオの身体に集合をかけ、もう1度元のマサオとなった。そしてその星へ目掛けて物凄い速度で飛んで行った。しかし生身の身体だったため、大気圏で燃え尽き、もう1度灰になった。 ▼天慶・フェルマーダイン・ンゲラポポビッチはクーという音を出した。あくびのようにも聞こえた。その横で、月子は今日もビデオチャットと2ch徘徊というルーチンを行っている。 |
2017/02/04 (土) 16:44 公開 |
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感想・批評 |
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がんばったとは思うよ、うん。
1:ひやとい <GzlbH.lc> 2017/02/04 (土) 17:39 微妙 3点 |