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はらふと銀州
大場康弘: よさこいにきた女と男の風景短編小説
 その日は特別晴れて、梅雨の季節にもぼたもちはあるのだろうなあという、あんぐわんな顔をしながら埼土は家のそとを眺めていた。
 庭の雪が陽の後光でゆるりと形をかえはじめた後、隣町から華彩がものめずらしい顔をしてたずねてきた。
 わたしはなんだろうと三門言葉でどうやら妊娠したいことがわかった、わたしの子を。
 女は、はにかむ気もなくただわたしの眼を見ている。180センチあるわたしを、前髪をたらしてただ実直にみている。わたしはこの気持ちにたえられるのかと、自分を測る思念を動かしたが、どうやら女というものは本気の女をくじけば、やってくるのはお釈迦ではなく、ダンペティオンなので、よもや無理もいえず、奥に通した。
 女は突然キスをすると、空いた手で下半身をまさぐってきた。わたしは自分の精子というのが噂がもたらした恐怖をかんじた。
「とおるさん、あなたが本気になってくれなけばはじまらないどす」
「しかし、ただのすけべでもない本気を、わたしもかした男だが、お前がわれん。正直たっているのは本能でお前でない。こういうのはよくないんじゃないか」
「とおるさん、わたしゅうは籠のせまりけから、おとうから免許皆伝いただいで、気が気でなくきたんどす。われもうせっぱくな、あきんどす。有名なあきんどをつくるとうどす。そしてあなたを助けとうどす」
「そんな勝手なことを。わたしは作家としてそれなりに食えている」
「それでも女という浅はかなものをかぎとうどすは、しまりけです」
「まいったなあ。しかしここでよさこいこられては、わたしも最後は本気だよもう」
 女の中に出したあと、女はそそくさに実家に帰っていったが、このすこぶる嵐でもない惨事に、わたしはとしがいもなく、机にすわって、ペンをとった。

2018/01/22 (月) 06:13 公開
作者メッセージ
現代小説のなかで謳歌にも大正小説のいいながれをつくってることで、この小説の時代軸が謎化させて感慨させられたら成功だな、とおもいます。
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感想・批評
なんかやな予感しかしない(笑
1:ひやとい <0MmWPXFm>
2018/01/24 (水) 01:37

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