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おれの冒険ふたたび
ひやとい: 第43回てきすとぽい杯最下位
 おれは猛烈に女が欲しかった。
 切望と言ってもいいくらいだった。
 しかし母親と学校以外で、女と話したことがない。
 職場も男ばかりの工場勤務だ。
 女に対して臆病で、そういったつきあいなどしたことがなかった。
 声をかけるなど、とんでもないことだ。
 そうしたわけで出会い系掲示板やマッチングサイトを見ては見るものの、一歩前に踏み出す勇気がなかった。
 どうしたらいいんだどうしたら……。
 気がつくともうアラサーになっていた。

 そんなある日、気晴らしに街へ出てみた。
 普段静かな町に住んでいるので、人の多さに圧倒される。
 巨大なところてんが押し出されているような人波。
 いつも家にいるのがいい加減いやになり出てきてしまったが、とても気晴らしどころじゃない。
 どうして街なんか来てしまったんだろうと後悔しはじめていた。
 映画も見ずゲームもパチンコもしないおれは、とりあえず自販機でコーヒーを買い、駅からほど近い公園のベンチに座った。
 園内は年寄りもちらほらといたが、若いやつらがほとんどだった。
 当然カップルもちらほらいる。
 猛烈にうらやましかった。
 くっそーくっそー。
 なぜおれには女がいないんだ!
 ますます街に来たのを後悔した。
 とりあえず喫煙所じゃないのを承知でタバコに火をつけ、吐き出すとため息混じりの声を小さく出す。
 すると、一人の女がこちらにやってきた。
 見るからに丸い小太りの、あまり小奇麗じゃない感じの女だった。
 年は三十過ぎくらいか、あきらかに顔つきもメンヘラのそれだった。
 少しビビっていると、女が隣に座ってきた。 ヤバイ、逃げよう。
 怖くなり立ち上がろうとした。
 すると声がした。
「ねえ、援助って出来る?」
 おれは久々に聞いた感のあるその言葉に、
「は?」
つい声を出してしまった。
 すると女は立ち上がり、ぷいとよその方に顔を向けるとスタスタと立ち去っていった。
 やばいこのままここにいたらやばい。
 おれは思わず駅へ足を向け、そして走った。
 
 電車の中でぐぐると、その街で有名な立ちんぼだった。
 ホストに貢ぐために身体を売る、風俗では雇ってもらえないような典型的な女だった。
 おれにはそんな女しかやってこないのか!
 女がほしいと切望したおれは、電車の中で一人絶望した。

2018/03/16 (金) 19:51 公開
作者メッセージ
まー出オチです。
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