責める目 |
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新参記念 |
(一) 山が燃えていた。毎年、秋になると毒々しい血の色に染まるこの山を彼は幼い時分より怖れていた。素朴な山岳信仰がこの辺りにあり、朽ちゆく体から脱した霊魂は山に吸い寄せられるかのように帰っていくのだと教えられたが、果たしてこの山に行った霊魂は安らいでいるのか、疑わしかった。秋に見せる地獄の炎のような赤色は霊魂が燃えているのではないかと思えて仕方なかった。呻く声が聞こえそうな気がして、なるべく意識を山にやらないようにしていたし、耳に気をつけていた。聞かなくてもよいものまで聞いてしまうことがあった。奇妙な視線を感じることも度々あった。この世のものとは思えない何かが見ている気がしてずいぶん怖がっていた。それを両親に言っても「世迷い言を言うな」とまともに取り合ってもらえなかった。 山肌にへばりつくようにして暮らしていた。水田を持っておらず、畑でやりくりする農家の生まれだった。「戦争の前は本当に苦しかった」と嘆息してから「昔よりよっぽどよい暮らしをしている、これ以上望むのは贅沢だ」と彼の両親は兄弟に耳にたこができるほど言い聞かせた。両親の十指すべての爪の先に砂や土が入り込んで黒くなっている。そのありさまは、見ているうちに必ず気が滅入ってきたものだった。 ほそぼそと養鶏もやってはいたが、大した稼ぎにはならなかった。他所に売るのではなく家族で食べるために鶏を一羽屠殺する役目を兄弟が担ったことがあった。抵抗する鶏の体温を胸に感じ、一瞬、情が移りかけたその時、射竦めるような厳しい目があり、瞬きもしないで凝視されていた。 「殺すのだな」と聞こえた。たまらなくなって鶏の頭を木製の太い棒で叩き潰す。とうに息絶えたのにまだ振り下ろす。鶏の砕けた頭部から飛散してくるものを顔に浴びるのが不快だったが振り下ろす両腕は言うことをきかなかった。無数の白い羽根が宙に舞っていた。膿のような色でどろどろした脳みそが土の上に流れて染み込んでいく。鉈に持ち替え、首を骨ごと落とした。小屋の中の鶏どもが身の危険を感じたのか狂ったように騒いでいた。 「お前らまで殺すつもりはない」と言いはしても鶏どもには言葉が届かず、頭をかきむしった。もうよい、と鉈を放り投げ、血抜きなどその後の作業は弟に任せた。弟は喜々としてはしゃいで作業を進めた。肉が食卓に並ぶのは久しぶりのことであるし無理もない、とは思いつつ、無邪気な様子に静かに腹を立てて憎んだ。 安普請の古い木造の二階家は外側が焦茶色に塗られていた。いったい塗料は何なのか、得体の知れないものでも使ったのではあるまいか。年を経るごとに色は褪せず、逆に濃くなり、やがて黒く見えるようになり、ひどく不気味な家となっていくのだが、両親を含め他の人間達は何とも思っていないようだった。電気をこわごわ使っていた。水がもったいないと風呂は週に一度に制限された。手拭いで体を擦ると垢がぼろぼろ落ちて、自らの不潔な肌に嫌悪感が湧き、擦りすぎて血が滲むのが常だった。村内でこれほどの暮らしをしている例はさすがに少なく、よく学校でからかわれた。自分を取り巻く貧しい環境は尋常ではないのだ、と感じて、その感覚は年齢があがるに従って強くなっていき、こんなところにいては駄目になる、できうる限り早く脱出しなくてはならない、と思わせた。 山を降りるために東京にある、とある企業内高校を受験した。全国的に有名な企業のものであり、難易度もなかなか高かったが入学試験は奇跡的にうまくいったようで合格した。将来の勤め先が、あの山に住む者どもには想像もつかないような稼ぎが、約束されたのだった。これに両親は驚いて、息子がやったことをあたかも自分達が成し遂げたかのように鼻を高くして村中に自慢して歩き、彼には無理をしてでも金を出すのだった。学費のみならず、生活費の金も送られてくるが寮生活だから金は余る。送られてきた金はたいてい遊んで散らした。覚えて間もない酒、煙草、パチンコに消えていった。 時折、手紙が来ることがあったがずいぶん平仮名が多く、字も幼児が書いたかのような拙いものだったし、内容の方もあまりに幼稚で、これは大人の書く代物ではない、と思ったものだ。両親は二人とも小学校までしか出ていなかった。と思い出した。読んでいると哀しくなったし、同時に恥ずかしくもなった。こんな手紙が自分のもとに送られてきているのを誰かに知られるのが嫌で、入念に細かく破いて捨てた。その時、視線を感じた。気味が悪い思いをしながら辺りを見回した。 企業内高校の三年間を無事に過ごし、念願のホワイトカラーの職に就いた。配属先を都内と希望したが社の方針で故郷に支社があるなら帰すらしく、その点は不満に思ったが山を降りた先に拡がっている市街地にある支店だったのでそれはよかった、と心底から思った。弟は農業高校に入学した、といつかの手紙に書いてあった。正気か、正気なのだろう、兼業するのか専業でやるのかわからないが家を継ぐ気でいるのだろう、と思い、癪に障った。よく人にかわいがられていた、媚びるのがうまい奴だった、と思い出した。両親に取り入ろうとしているのが透けて見えて、頭にきた。出世するのだ、遥か上からこの者どもを見下ろすのだ、と決心した。 (二) 「何だ、その目は」と妻は彼からよく言われたものだ。気の強さが災いして生意気と思われることは何度もあって損をしてきたが、いまさらこの性分は変えられない。夫婦喧嘩をすればきっと目つきが厳しくなっているはずで、そのことか、と一度は決めつけた。どうやら違うらしく、彼が指摘するのは平生のことも含むものだ、とわかってきた。常にこの目が気に入らないならなぜ結婚したのか、相応の年齢で世帯を持っていた方が世間と社内におけるステータスになるとでもとらえているのか、本当にそんな理由だろうか、まさか、と思い、しかし、もしや、と否定できなかった。 社宅に四人で暮らしていた。八歳の長男と四歳の次男を出産した。この兄弟は一見、快活そうに見えた。公園が社宅のすぐそばにあり、よく同じ社宅の年齢が近い子供達とはしゃぐ声をあげて遊んでいる。それを遠くから微笑ましく見守っていたものだが、いつか無邪気さが奥へ引っ込み、世の中の雰囲気がわかるようになった時にこの兄弟は耐えられるだろうか、と危惧していた。時折見せるひどく不安げな態度に神経の脆さがうかがえて、心配させた。 彼は自分の子供である兄弟にあまり興味を抱かないようで、それよりも家を建てる、という自身の夢以外見ていないようなものだった。仕事の方では、評価されて偉くなりたいという野心だけでなく、早く庭付き一戸建てが欲しいという夢の両方が、激務へ走らせた。今までも少しずつ金を貯めてきたが、彼は焦れたように月々貯蓄する額を急に増やし、妻は家計のやりくりに頭を抱えた。 梅雨のある日のことだ。雨音がしないので霧雨でも降っているのか、肌にまといつく粘り気のある湿気が気持ち悪く、エアコンの除湿をかけているがまるで効かない。家電をそろそろ買い換えないと不愉快だけ積もっていくことになりはしないか、と思い、先々のことより今の生活をどうにかしてほしい、と不満を抱いていたが言い出せないのだった。じっとりと嫌な汗が出る環境だというのに彼は気にならないようで、使い古したソファに横になって腕枕し、テレビを見てげらげら笑い声をたてている。耳がどうにかなってしまいそうな声で辟易したが機嫌は良さそうだった。いつの間にか顔色をうかがう癖がついており、自覚する度に自己嫌悪したものだが癇癪持ちの彼と生活していくには仕方がない、と思うより他なかった。特に金のことに関する問題が持ち上がるとすぐに怒りを爆発させて、時には手を上げることもあり、危険だった。この日はひときわ神経過敏になる金のことを相談しなければならず、心は重かった。意を決し通帳を渡すと笑い声がぴたりと止んだ。貯蓄する金を増やしたせいで給料日まであと数日というところで口座が空になってしまうことが多くなっていた。隠したり、誤魔化したりしたところでどうしようもない。 「もう金がなくなったのか」と瞬時に顔が赤黒くなり、目を吊り上げて怒鳴りだした。何度となく繰り返してきた光景だ。上機嫌の大笑いから一瞬で不機嫌の極みへ移るこの有様は狂人のそれだとしか思えない。 「てめえ、何に使った」と怒りはさらに高まったようで胸倉をつかまれ、ねじりあげられて、強い力で押されて背中が壁に衝突した。痛みに思わず声が漏れる。 「どうせつまらないものでも買ったんだろうが」とさらに声を大きくして威圧してくる。無駄遣いなどできるような余裕は最初からない、なぜなら給料が入るとすぐに貯蓄用の口座へ決まった額の金を移すからだ。一方的に決めつけられて責められると、なぜこんな人間になじられるのか、と悔しくなり、つい言い返して 「あんたにてめえ呼ばわりされる筋合いなんてない。貯蓄にまわしすぎているからこうなるのに」と喧嘩を買ってしまう。すでにこの時には後悔しはじめているがもう止まらない。 「家を建てるために蓄えて何が悪い」と、多少怯んだところを逃さずに 「やりすぎだと言っているでしょ。第一、あなたの親はどうして一円もよこさないわけ。私の実家だって金持ちじゃないけど、五百万出すと言っているんだから」と追撃して怒鳴り返す。すると 「農家の出だからといって馬鹿にしているんだろう、え、そうだろう」と見当違いのことを言われ、どうやらコンプレックスを刺激してしまったようでまずいと思い 「誰もそんなことを」と言い切らないうちに彼は妻ではなく、あらぬ方へ視線を動かした。そのまましばらく奇妙で張り詰めた沈黙が降りてきて、訝しんでいるとふとつかむ手を解いた。そろりとその場から抜け出そうとするといきなり顎をつかまれ、目を覗き込んでくる。さきほど睨んでいた何もない空間に目を転じて、再び目を見てくる。何かと見比べているかのような素振りだった、しかし何と見比べているというのだろう、気味が悪かった。 兄弟が一部始終を見ていた。体を小刻みに震わせてすっかり萎縮している。親を嫌うのならまだしも、怖がるとなると事情が違ってくる。兄弟は暗い部屋の隅にいて、密着して足を抱えて座って、嵐が過ぎるのを待っていたようだった。邪魔が入ったとばかりに嫌味な舌打ちを響かせて部屋から出ていった。 「もう終わったから」と言って部屋の灯りをつけてやった。兄弟二人をきつく抱き寄せても、体の震えは簡単には止まりそうになかった。怒りが収まらないのか、離れた部屋から彼が大きな物音をたてると、兄弟はついに泣き出し 「まだ怒っているよ」と怯えきって涙が止まらない長男が苦しそうに途切れ途切れに言ったがどう慰めてれば安心を与えられるだろうか、と悩んでかける言葉や妙案が浮かばず途方に暮れた。 月に一度は必ずといってよいほどこのような理不尽で気の滅入る日があった。育ち盛りの兄弟が身も心も萎んでいくように思えて不憫だった。百歩譲って自分にのみ害があるならば我慢しよう、けれど子供達にまで害があるなら何か考えなくてはいけないのではないか、とため息をついた。〈離婚〉の二文字は何度も頭の中をよぎったがその後が問題であって、この身一つならどうとでもなるだろうが兄弟を抱えるとなると途端に怪しくなるし、というのも無理な貯蓄のために生活がかつかつになってはいるが稼ぎの面では彼には勝てないし、どれだけ働いても今より貧しい暮らしになるのはわかりきったことなので、兄弟の将来、仮に二人とも大学まで進学させるとなった場合、別れずに過ごした方がよいことは火を見るより明らかだ、と思い、やるせなくて恨みが募った。 ある日曜の昼過ぎにまた喧嘩が始まった。飯が不味いと文句をいう。冷凍の蕎麦を商品の説明通りに茹でて、麺つゆと水の比率も説明通りにしたものであって、これに文句があるというならもう蕎麦屋に行くしかないではないか、と反発した。職場の人間関係がうまくいかないと愚痴を近頃頻りに言っていた、と思い出す。そのことの八つ当たりだとしたら、あまりに馬鹿馬鹿しい、と呆れた。彼が激した時、物を投げて壊すのはよくあることだったが、この日は横腹を蹴り上げられた。不意打ちで防御できず、何が起こったか、しばらくわからないくらいでしかも力の加減が一切なかったために蹴られた箇所の激痛とともに呼吸困難に襲われて、その場にうずくまった。それを見て白けたのか、彼は別の部屋へぶつぶつ言いながら引き上げていった。必死の思いで息を整えると情けないやら悔しいやら、様々な思いが錯綜して、仕返しのつもりで兄弟を連れて社宅から逃げ出した。まんまと兄弟と一緒に外に出て容易に見つからないと思われるところまで来た頃にはざまを見ろ、と痛快な気分だった。さて行くところといって実家より他にない。自転車で、二十分ほどで着く場所にあった。長男には自分の自転車でついてくるように言い、次男は後輪の子供乗せに座らせた。実家に短期間帰ることはよくやった。そうでもしなければ気が収まらないことが今までに多々あった。実家へ帰る時、兄弟を連れていけるかどうかが勝負だった。連れていけば彼が頭を下げに来るが、兄弟を連れ出せなければ逆になり、こちらから頭を下げに戻るしかなくて、玄関先で土下座をさせられたこともあった。心配そうに覗く四つの目に見られてしまっては土下座だろうとなんだろうとやるしかないのだった。兄弟は人質だった。 実家に行くには大きな河を越える必要があった。架けられた橋を渡る際に河を見ると大量の土砂を含んでいるようで、橋の下では茶色く濁った水が荒ぶっていた。上流の方で相当降ったのだろうか、と自転車を止めてぼんやり眺めた。急に進むのをやめたので長男も次男も不思議そうな顔をしていた。河の轟音が耳に届いていた。ふと振り返って兄弟を見て、妙な気を起こしかけた。この橋から三人で飛び降りてしまえば、と。 古くて粗末な平屋建てに妻の母と妹、女二人が住んでいた。ベルを鳴らすと気怠そうな表情の還暦を過ぎた母が出てきた。顔を見るなり 「またかい」とうんざりだという口調で言い「今度は何をされたかね」とため息混じりに 言いつつ孫に顔が向く。兄弟を犬か猫かのように扱い、ぞんざいな手つきで撫でる。兄弟を連れてくるといつもこのような調子で、そしてそれを見ては不快になるのもいつものことだった。 家に上がるとすぐに四畳半の部屋があり、居間として使っていた。母は物を捨てない性分なので四畳半の部屋はひどく狭苦しい。二つ歳が下の妹が薄荷の臭いがする細長い煙草をくゆらせていた。きつい目をした女で兄弟は狐のようだとよく言うのだが本人はそう言われることが嫌であるらしく、さらに目つきがきつくなるので兄弟にはもう言うなと禁じていた。 「体を思いっきり蹴られたの」と妹を通り越して、台所に行った母へ向けて声を大きくして言った。「まあ」などと言う頓狂な声がくぐもって聞こえた。 「姉さんは主婦だから曜日なんてあってないようなものでも、子供の方には学校や幼稚園があるでしょ。今日中に帰んなよ」とさも迷惑そうに嫌みたらしく言われて、そういえば逃げ出すことに精一杯で他のことに気を配れていなかった、と思い、兄弟を見れば二人とも落ち着きがないように見えた。しかしながら、もう行動を起こしてしまったのだからしようがない。 「こっちから先に帰ったらどう扱われるか知っているでしょ」と言い返すと妹は鼻を鳴らした。テレビがついており、どっと笑う声が聞こえてきて不愉快だったのでリモコンで消した。母が戻ってきて番茶を出し、兄弟には缶コーラを渡したのだったがどちらも炭酸が苦手なことを母はまだ覚えていないようだった。兄弟が困った顔をしているというのに全く気づく様子がなく、さも大義そうに不機嫌な顔つきで座椅子へ腰をおろした。 「あんたはもう少し我慢した方がいいかもね。顔に何かされたんなら話は別だよ。女の顔に手を上げるなんてやっちゃいけない。だけどやられたのは体だろうに。第一、何がどうしてそんなことになったんだい。どうせ喧嘩売られて、よせばいいのにまた買ったんだろうに。買わなければいい」と呆れたというように言われて 「言いたい放題やりたい放題にさせておけって、そう言いたいの」と憮然として語気を強めて問うと、あらかじめ準備してあったかのようにすらすらと話す。 「そうそう、そういうこと。やり返すからこうなるっていい加減に学ばないと。父さんだって似たようなものだったけど私はやり返さなかったもの。やれば、話が大きくなるから。そうなったらなったで困るし、現にあんたも今、困っているだろう」 「女が黙っていれば丸く収まるって」もはや怒り心頭だった。 「だいたいそんなもんだね」と軽くあしらうのだった。 「それはちょっと違う。いや、絶対違う」声が思わず大きくなった。「女が黙って取り繕わないと収まらないような関係はもう夫婦じゃない。気持ちを殺して表面だけ整えればいいだなんて、時代遅れだし、それに」そんなものは家族ではない、と続けるつもりだったが自らの心中に強い抵抗が生じて言い切ることができず、不愉快だった。 長男が無理にコーラを飲もうとして咳き込み、卓の上のみならず畳にまでこぼした。黙って母が鈍い動きで立ち上がり、布巾をとってきて雑に拭いた。コーラを吸い込んだ布巾は黒くなっていく。 (三) 見られていた。無数の目に見られていた。「てめえはなんだ」と怒鳴った。 「何か、文句でもあるか、あるんだろうな、責めているつもりなんだろう、え、屈服する俺を見たいんだろう、その目で見たいんだろう、やってみやがれ、しつこい奴め、苛ついているんだ、俺は苛ついているんだ、しつこいその目を潰してやる」 ふっと目覚めると彼はソファの上で横になっていた。嫌な夢を見たものだ、と思い、寝汗が下着に染み込んで肌に絡みついてくるのをひどく不快に感じた。テレビがつけっぱなしになっていた。時刻を確認すると夜中の一時を過ぎていた。外は暗く、どこまでどこまでもずっと遠くまで闇が深く立ち込めていて人の気配がなく、まるで自分一人が置いてけぼりをくったような気分になった。襖を隔てた後ろの部屋で妻と子供たちが寝ていることにようやく気づいて、奇怪な孤独感はどこかへ失せた。 数日前、兄弟を連れてここを出ていった妻に対し、怒りばかり募って心は大嵐となったが、ふんぞり返って待っても帰ってこないことは今までの経験からわかっていた。菓子折りを買い、妻の実家へこちらから出向くより他になかった。車を出して近くまでは簡単に来られるのだが住宅街に入ると途端に迷う。入り組んだ道をでたらめに車を走らせているとすぐに大通りに出てしまい、この辺りだったはずだが間違えたか、と狼狽えた。一時間以上迷いに迷ってやっと着いた。すぐには降りず、車の中で台本を入念に練った。それから頭を下げるのは癪だがしようがない、と肚をくくって風雨に長いことさらされて色褪せた玄関のチャイムを押した。結果としては彼が案じたことのたいていは杞憂に終わったと言ってよかったがやはり気分のよいものではなかった。妻だけでなく義母や義妹も夫婦喧嘩のことについて一言も触れなかった。それは直接言及されるよりこたえた。大仰に、そして馬鹿丁寧に接せられ、夕食を共にして本当にこのまま妻と兄弟を連れて帰ることになりそうだったのでそれはそれですっきりしない、と最後に、すみませんでした、と言っておいた。何より気味が悪かったのはあの家にいる間中、背中に刺さる視線だった。とみに強く見られていたのだった。あの目があったのだ、しかしあの目を諌めるようと何らかの行動を起こすことはできない、あの場にいるみなに頭がどうかしていると思われる、と耐えていた。 今、思い出しても寒気がするくらいだ。ため息をついてテレビを消した。急に後ろから大きないびきが聞こえ、神経にさわった。妻のものではなかった、子供のものだ、長男か、次男か、わからないがうるさかった。今から寝られるだろうか、飲み残した酒を呷ればそれで眠気がもう一度到来するだろうか、と考えたが酒を飲む気にどうしてもなれない。 白々した灯りに照らされていた。退屈して卓の上から住宅メーカーのカタログを手にとった。何度見ても飽きないのだった。一国一城の主という響きは心地よい、住まう城が問題だ、山の実家のような外見は御免だ、誰にも馬鹿にされない家を建てたい、いや誰もが羨む家に住みたい、そのためなら金は惜しまない、と胸の中で何度も繰り返した想いを心の中で唱えていた。ひときわ大きないびきがたった。建てる家のイメージを思い描き始めて悦に入っていたというのに、夢想が邪魔され舌打ちして憎々しく思って振り返った。寝ている時くらい静かにしろ、と呟く。いびきはやまず、ついに「うるさい」と叫んだ。機嫌を損ねて襖を力任せに開け放つと妻がまず飛び起きて、ナツメ球の灯りを宿した紅い二つの瞳が驚いている。 はっと思い、一歩退いた。覚えのある目だと息を呑んだ。まさか、と頭を振っても打ち消せないこの直感もろとも消したいと 「子供のいびきがひどいんだ。黙らせろ」と声を荒立てた。 「いびきだなんて、こんなのただの寝息でしょ」と妻はおろおろしていた。 「てめえは今まで寝ていたから知らないだけだ、こっちは大事なことを考えていたっていうのにうるさくしやがって」 「大事なことってなに」と妻がやや反発するように問うたのが気に入らなかったが 「これから建てる家さ」と答えると 「家が今どうしたって言うの、おかしな人、こんな夜更けに」と嘲笑ってから「あんたもよくいびきかいているのよ。それはずいぶん大きくていつも子供たちを寝かしつけるのに苦労するぐらいで、今日だってようやく寝入ったというのにまた馬鹿なことで声を張り上げて」とやり返してくる。頭が熱くなっていくのがわかった。足が出そうになったが蹴り上げるのはまずい、と自重し、心を落ち着かせようとしてもまったくうまくいかずに結局は 「ガキのいびきを黙らせろと言っているんだ」と喉が痛くなるほどの声を出して怒鳴ってしまった。一際大きい声に兄弟も跳ね起きて、不穏さを感じ取ったものらしく怯える二人の息遣いがかすかに聞こえた。 また、見られていた。どこかから矢のように視線が飛んできているのがわかり、こらえきれなくなって外へ飛び出して闇夜の中をあてもなく走り出した。久しぶりの運動だったので体にこたえてすぐに息が上がった。まだ見られていた。 「殺すのだな」と聞こえた。首を強く振った。 「殺すつもりはない、そこまでしない、うるさい、黙れ」と錯乱して周囲にある家々のことに気を使う余裕がなく必死な様子で大声を出した。不審に思われたのだろう、どこかから戸を開け放つ音が冷たく響いた。我に返り、狂っているなどと思われるのは嫌だ、と足音を潜めて社宅へ逃げ帰った。 (四) 妻は呆然とすること頻りだった。一軒家は建ったには建ったが、莫大な金額のローンを抱えることとなったというのに、彼はずいぶん楽天的であって、その自信はどこから沸くのだろうか、と訝しんだ。 土地は、住宅街の中に突如現れて売りに出された宅地をこれ幸いと飛びついて契約したものだが、もとは農地だったらしく、家々の中でぽつねんと残された格好の田んぼを、意地を張った持ち主が守ってきたがついに諦めたのだ、と不動産会社は説明した。この住宅街自体が比較的新しいものなのか、碁盤の目のように区切られ整理されていて、通りからそれなりに奥にある土地だったが迷うということはなかった。 真っ白な壁をした家だった。濃い色は好かない、とこだわりを見せ、汚れやすいのではないか、と何度か言ってみたが自らの案を否定されるとあからさまに不機嫌になり危険を感じて、こちらの注文を少々受け入れされたが、結局は彼の理想を、わがままを可能な限り取り入れて建てられることとなった。近所の家々と比べてもさして大きな家ではないのに費用が嵩んだのはそのためだった。二階家で、庭があった。その他に車を二台分は停められる駐車スペースまであった。そこに一台、紺色の外国車が停まっている。立派なマイカー、マイホームが揃った、と彼は鼻を高くした。 ここまで至るのにだいぶ苦労した。あれこれ細かい注文を矢継ぎ早に出しては建築会社の担当の人間をずいぶん困らせていた。凝り方は尋常ではなく、強固な信念を曲げるつもりは毛頭ないらしく、途中で真剣に付き合うのを放棄した。というのも口出しをすれば他人の前だろうと気にもしないで平然と怒鳴るようになっていて恥ずかしさすら感じ、馬鹿馬鹿しくもなったからだった。 一番愛しているのはこの家であって、家族は付属品のようなものらしかった。 次男はたくましくなったように見えた。心を麻痺させただけかもしれないが怒号を無視できるようにはなった。長男は静かに狂っていったように思えてならなかった。社宅にいた頃の兄弟はどちらも怯えていたものだが、振り返ると長男の方が次男と比べて異様に彼を恐れていた。しゃくりあげないように苦しく息を詰めて泣き出すことがたびたびあり「お父さんが怖い」と口癖のようによく言っていた。この家に越してからは彼と滅多に口をきかないようにし、視界に入るのも嫌がって食事の時は終始俯いたままだった。食卓には常に気鬱さが漂い、四人分の咀嚼音が不気味に響いていた。やがて長男は食事を自室でとりたいと言い出し、必死な様子でせがむのでさすがに不憫に思い一度許すと、もう二度と食卓につくことはなかった。同時にもともとの学校嫌いが悪化していき、今では三日に一度は中学校を欠席するようになり、休んだ日には自室にこもって物音一つたてないで過ごしている。自分という人間の気配を、存在を消そうとしているかのようだった。登校する日の間隔がどんどんひらいていったが叱る気にはなれなかった。 ある時、トイレから自室へ戻る長男とかちあい、そう言えばなぜか一度も尋ねたことのなかった直球の質問をぶつけてみた。 「どうして学校に行きたくないの」と努めて柔らかく優しく話しかけた。 「気力がなくなっちゃったんだ」 気力、と小さく口の中で繰り返した。よくわからず、しばらく何も言わないで続きを促した。 「お父さんに盗られちゃった感じがする。元気だよね、あの人。吸われてしまったんだよ」 吸われたとは妙な表現だ、と思ったが、よくよく考えればなるほどそうかもしれない、多少はましと言える次男でさえいつも陰気な様子でいるのはそのせいかと思った。最後に兄弟の笑顔を見たのはいつだったかも思い出せない、家の外では笑えているのだろうか、学校ではどうなのだろうか、と考え始めるとひどく気が滅入り、あんな人間と結婚してしまったことを後悔し、兄弟に対しては申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。産んでしまってすまないと心底から思った。 彼の仕事の具合はこの頃すこぶるよかった。無自覚に吸い込んだ気力のおかげか、何もかもうまくことが運んでいるようで絶好調といった様相を呈し、ついには東京の本社に転勤が決まった。家の中のよどんだ空気も気にならいようで、悲願だったのだ、と一人で浮かれ騒いでいた。単身赴任になると聞いて、むしろそのことに妻と兄弟の三人はそれぞれ狂喜したものだった。 単身赴任はたった二ヶ月で終わった。勤務先はもとの支店に戻された。しばらく会社に行けない、と馬鹿なことを言い出し、笑えない冗談だと軽く受け流していたが、本格的に出社拒否を始めた。 (五) 常に見られているわけではないらしく、いったい、いつ、どこで、何をしている時に見るのか、見ようとするのか、問おうとすれば目は失せていた。 故郷を捨てた。親も捨てた。山の実家のような、あんな家、あんな生活、あんな貧しさをひどく嫌って生きてきた。所帯を持ち、子供が産まれ、決して自分が体験したことを家族に味わわせないと一人で誓ったことがあった、と懐かしく思い出していた。 配属された本社での仕事に全くついていけず、できないことはないはずだ、と孤軍奮闘したがやはり駄目で、年下や役職の下の者に恥を忍んで教えを請うたが無駄だった。遅くまで職場で粘っても間違いや失敗だらけで、見かねた上司が 「元の支店に戻そうか」と話を持ちかけてきた。プライドはずたずたとなっており、空元気を出すこともできなかった。さんざん悩みはしたが結局、提案を受け入れた。同時に半年間の休職を願い出た。たった二ヶ月で都落ちしたとあってはもとの支店の連中に合わす顔がなく、冷却期間が必要だ、と思ったゆえのことだった。初秋のことで、再び出社するのは新年度からということになる。 ひたすら腐った。奇妙なほどに強かった自信はあっけなく崩壊しており、酒を買い込んではすぐに飲み干してはまた買い込むという、ふてくされた男がよくやるようなことをまさか自分自身がやるはめになるとは、などと思ったりもしたが、想像力がないので他の憂さ晴らしが思いつかないのだった。夜でも灯りを点けないでいて、単身赴任する前に買って居間に設置した大型テレビの発する光がぼうっと男の赤ら顔を浮き上がらせて、映る場面の色に応じて彼の顔がさまざまな色合いに変化して鈍く光る。 家の者は遠巻きに様子を見ていた。六つの目が睨んでいる、と思い、腹立たしかった。支える気はないのか、こんな時には助け合うのが家族ではないのか、とこの家族が機能していると錯覚している節があった。誰も彼にはっきり言う者はいなかった。何が不満なのか、毎日風呂に入れるし食べるものに不自由しない、立派な一軒家に住めているのにそれ以上の何を望むというのか、他に何か足りないものが一つでもあるだろうか、と疑問に思った。 働き盛りの男が日中から酒を買い込む姿がどう見えるか急に気になりだして、外に出るのが億劫だと思うようになり、買い出しを妻に頼むと多少の嫌味を言われるのではないかと構えたというのに簡単に引き受けたので拍子抜けしていた。しかし妻の表情は寒気がするほど平板だった。 一ヶ月が無為に過ぎ去った。ただただテレビを眺めて酒を飲む暮らしにさすがに飽き始めて、ふと長男が気になり、あたかも新しい玩具を手に入れたかのように長男のことを考えるのに夢中になった。中学校を欠席する頻度が高くなっているとは聞いていたが、この一ヶ月ずっと家の中にいて、長男は一日も登校していない事実に気づいた。頭に血がのぼり、問題ある生徒の保護者だとでも思われているのではないか、と自分の価値がさらに傷つくような気がして頭をかきむしった。考え始めるときりがなく、他のことにも意識が向かった。この家にも不満がないわけではない、気に入らないことはある、一人で住むわけではないから妻の言い分に従ったところがいくつかあり、譲れる部分は少々譲って折れてやって話を進めてしまったことが思い出されて、今になって悔しくなってきたのだった。 怒りが走った。まずは長男だ、あいつを何とかしなければならない、と乱暴にドアを開けて居間を出て階段を上がった。足音がいやに響いて仕方なく、自分以外に誰一人いないかのような異様なほどの静寂が家の中に充満しているのに気づいてにわかに戸惑ったが、それくらいのことで激した感情は収まらず長男の部屋のドアをノックもせずに開け放った。人間が何日も密閉された空間に篭った時に漂う独特の何かが饐えたような悪臭が鼻を打った。換気すらしていないな、と思い、俺の家の部屋だぞ、長男に割り当てただけで所有者は俺だ、それをこんな風に使いやがって、とさらに昂った。脱ぎ捨てた服、漫画雑誌、書籍の類、ノート、ゲーム機やそれに関する何か、菓子の袋、ペットボトル、その他雑多なものが無秩序に室内の床に投げ捨てられて、うっすら埃まで被っている始末だった。 寝間着のままの長男がベッドに起き上がっていた。彼が迫ってきていると感づいていたらしく、枕を凹んでしまうほどきつく抱きしめており、顔は情けないほど青ざめていて、初めから抵抗を諦めていることがうかがえた。どうやってもこちらが加害者になる、悪者になる、それが癪に障った。自分の子供すら思い通りにいかない現実に敗北感を覚えて 「てめえは何で学校に行かんのだ」と声の大きさを抑えられずに叫んだ。長男は頭を抱えてうつむき、体を震わせはじめ、何も言えないようだった。 「何で行かん。理由くらいあるだろう。言ってみろ」とさきほどと同じ声量で問うと、泣いて呻く声が顔を押しつけた枕と顔の間から漏れてきた。すぐそばまで進み、左手で髪の毛をつかんで顔を上げさせ、頬を殴った。長男はベッドの上から床へ転がり落ちた。顔を見ると鼻血が大量に流れ出していて、やがて顎まで垂れていき床に滴り落ちた。 「明日は行けよ、わかったか」 「はい」 「本当に行くんだろうな」 「はい」 惚けた声で、はい、としか言わない長男に途端に関心が失せていった。もう一度殴ったところで何も変わらないことがわかってしまい、部屋を出た。 廊下に妻が無言で立っており、ひどく驚いて頓狂な声をあげた。表情が伺えないこともそうだが、黒い何かが背後で渦巻いているのが見えて、ぎょっとして瞬きをした間に消えたようだった。 「てめえの育て方が悪かったんだ」と言うつもりだったが気味の悪さに声をかけることがためらわれて、立ち尽くした。妻が彼の横をすっと通って、扉を開閉する音が聞こえた。応じるように天井の隅で家鳴りがした。思わずぞっとした。 このままここにいてもしようがない、と一階に降りてキッチンに行き、水道水をコップに注いで一息に飲んだ。テレビをつけてみたが朝に見たニュースと同じ内容を繰り返しているだけだった。舌打ちして消した。 家をなおすことを思いつくと機嫌が良くなり喜色を浮かべた。家ならば業者を呼んで、注文して、金さえ払えば思い通りにできる、まずは壁紙だ、一階や二階の廊下の壁はベージュ色に塗りたくられているが真っ白にしたい、と考え出すと楽しくなってくるのだった。床も張り替えたい、濃い茶色のフローリングをもう少し明るい色にしたい、汚れが目立つ、と妻が言い張るので今の色にしたが汚れたら掃除して消せばよい話ではないか、と今になってやっと気づいたというように膝を打った。 次男が帰宅したらしく玄関の方から物音が聞こえたが、ただいまも何も言わずにそそくさと二階へ上がっていった。どうせ妻と兄弟の三人で陰口を言い合うのだろ、と容易に予想できてむしゃくしゃした。外に出て、車を出した。 視界に風景が飛び込んできては後ろへ過ぎ去っていき、また次の風景が同じように飛び込んできては流れていく、その連続は不思議と見ていて飽きなかった。この日は見慣れた風景が新鮮に映り、心は平穏を久方ぶりに取り戻した。いつか空は群青色に染まっていて夜を迎える準備をし、西の方角に焼けた陽の名残があった。蜜柑色は次第に収まり、小さくなっていく。綺麗だ、と思えたようにいつの間にか心に余裕が出てきたようだった。帰ったらやりすぎたと長男に詫びよう、この際、何でも言い合えばよいのだ、長男にも事情があったのだろうし、それを聞いてやればよいことだ、と前向きな気持ちになっていた。 どれほど時間が経ったかわからなかったが、すっかり夜になっていた。表通りから住宅街へ入っていく際にやけに明るく、赤く光っている場所があった。上空ではなく、地面の方から夜の闇に抵抗するように焦がしている。どこかの家に火事でもあったろうか、と不審に思い、スピードを落として彼が建てた家に近づいていくにつれ、紅色が強くなり人々の騒いでいる声が耳に入りだした。 白い壁の二階家が燃えていた。急ブレーキをかけて車から降りた。野次馬が集っており、遠くからかすかにサイレンが聞こえだして、消防車が駆けつけようとしているのがわかったが、もう手遅れだと直感した。よろよろと近づき、口をあけて燃える家を見上げた。 「俺の家が焼けてしまう」と呟いた。 火は家の内側からついたように見えて、破れた窓ガラスから炎が出ていた。奥の居間の方が一際激しく燃えているようだ。彼は家の中に飛び込んでいた。止める声を背中で聞いたが無視して、熱せられた空気を突っ切っていた。ジャケットを脱いで手に持ち、少しでも火を鎮めようと居間に入った。尋常ではない熱さに頬が痛く、煙に咳き込み、涙を流しながら片手で口を抑えて、姿勢を低く落として進むとテレビの前にある物体が激しく燃え盛っていた。暴れ狂う炎の中に黒い物体が三つ固まり、座り込んでいた。人間のようであった。体を紐状の何かで縛りつけてあるようでそれぞれ頭をがっくりと下へ向けていた。肉の焼ける臭いにようやく気づいて吐き気を覚えながらも、近づいていくと一つの頭がゆっくりと上がっていき、彼を見据えた。射竦めるように、ひたすらに厳しく咎めるかのように見てくる、あの目が光っていた。 彼は金縛りにあったように動けなかった。 「殺したわけではない」とかろうじて言う。 「似たようなものだ」と低く笑う声が聞こえた。(了) |
2019/07/03 (水) 00:24 公開 2019/07/03 (水) 00:32 編集 |
作者メッセージ
古井由吉みたいな小説が書きたくて書いたがうまくいかなかった。 ボロボロに叩いてこの小説を成仏させてやってくれ。 |
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