伊坂幸太郎作品で良くあるパターンですね。
時間軸が同じ中で複数の人の群像劇かと思ったら、そもそも時間軸が違ったと言う感じの話。
ただ、読み終わって感じるのは「騙されてた!!」みたいなことで、あまり読後感は良くなかったりします。
　
この作品に関して言えば、もっとそれぞれのエピソードを具体的に書いても良かったように思います。
彫刻刀を入れた事とか、その理由とか。

もっとスムーズに流れるように書けば、良くなったのではないかと思います。

男が置かれた状況とか、作中の月子がどうしてもうこの世にはいないのかとか、枚数を残しているのに説明していないのはもったいないと思いました。
ろくでもない生き方をしていたから、ろくでもない最期を迎える事になった自業自得の物語なのでしょうが、作者の頭にの中にはあるだろう、その過程が抜け落ちている事は、読者へのサービス不足というしか言えません。
ただ、最期のセリフは潜在的ドＳ感を醸し出していて、笑えました。

エッセイ。
コテハン月子や秋葉原殺傷事件の犯人についての語りを通してデジタルネイティブ的な世代と自らの乖離が述べられ、かといってそこに物語的な比重があるわけでもなくただつれづれに語りを語るばかり。

＞いずれにしても、月子はリアルには降りて来そうもない。だから、「月子」なのか。
意図が判然としない。そしてそれが判然としないなら月子の理由である理由がない。
降りて来そうもないを承けて月が空高く在ることを強調するなら「月」子の方が適当に思う。

計算もなにもなく、筆の赴くままやりたい放題やった作品。
海にスマホを投げ捨てて終わる世界ならば道理もクソもなく目覚めれば消える夢と変わりない。
それを言葉で描けることを少し羨ましく思う。

内容はわかったけど、おもしろいとは思えなかった

>だけど、夜空、とはいかないみたいだ。

この文章の意味がわからなかった。

月子というコテハンのパロディをもって人生を月の満ち欠けに擬える話。
のっけから意味不明。ただ…が宙ぶらりんになってる。
餃子工場やらユーチューバーやら妙な位置でフォーカスを絞っているのはナンセンスを狙っての事か。
テーマに感じるものはあったがそれを表現するにはあまりに散漫な話の作りであったように思う。

喜劇からの昇華、そして喜劇は続く。
昇華へのジャンクションとなっている箇所を話者が語るほどに読者へ向け印象的に描写出来ているかが問題。
人物達が共有した魅せられるほどに美しい空は「少し欠けた月の明りに染まる、雲一つない夜空の静謐さ」の一文で語り尽くされてしまった。
それを共有できない人にとってこの話はただの夫婦漫才でしかない。
勿体無いと思った。

＞分娩代
どうでもいいけど誰も突っ込まんので一応。

冒頭のセリフの意味がわからなかった。ほとんど説明ばかりだったのはマイナス要素。

起承転結が明確かつ詰め込まれた情報にも過不足ない、オチめがけて一直線なssのお手本のような話。
内輪受けな感は否めないが今回のネタがネタだけにそこはしょうがない。
逆に馬鹿馬鹿しいオチさえ思い付けばそこから逆算していくらでも同じような話を書けそう。
まあ思いつくかどうかという事こそいつだって問題になるなのだろうけど。

良かったけど、バーで女をレイプした話は昔の話なのでは、と思った（詳しいことは知らないが、「コルトレーンのサックス」や「一九六ニ年録音の『バラード』」という記述から）。そこに違和感があった。
ラストのセリフを使ったのはうまいと思った。
そう言えば、そんなこと言ってたよな。