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わたしの月子  作者:ヤマモト  へのレス
女性一人称で描かれた二重人格=明子と月子のお話。面白かったです。

>月子が「誕生した」のは2003年、わたしのママとパパが離婚した年だ。

上手い出だしです。それからというもの、明子と月子は二人三脚で日常を
滑り落ちていきます。ただ少しわかりづらかったのは、

>たとえば、こんなことがあった。2003年の暮れにママとパパは結局離婚
>したのだけれど、最初の数日間、パパについて家を出て行った月子は、一週間も
>経たないうちにわたしとママの住むマンションに戻ってきた。

このとき「実体」は明子のまま、精神は月子になってパパの元へいたんでしょうか?
そう解釈するしかありませんが……。

後半、作家を目指す月子は巨大掲示板のこの祭りにまでたどりつきます。
ここからは現実の祭りへの関わりとなり、奇妙な面白さを感じさせます。

>おかげさまで、今回ずいぶん沢山の作品が集まった。これらの作品は、
>月子の「誕生日」に合わせた素晴らしい「サプライズ」になるはずだ。

最後はニヤリとさせてもらいました。

 

花と月子  へのレス

夏の日に切り取られた一枚のポートレートのような作品だと思いました。
まず第一に色鮮やかです。

>地面には程良く刈り込まれた緑鮮やかな芝生
>背後に広がる空はスカイブルーというよりはセルリアンブルーのような色をしていて、
>そして巨大な入道雲の姿があった。太陽の姿はなかったが
>袖リボンの白いブラウスを着てサックスブルーのフレアスカートを穿いた痩身の女性が

加えて花の数々
>ひまわりが咲き乱れ、ゼラニウムの花があり、アリストメリアの花らしきものも見え、
>更にその奥には松の樹が数本見える。
>ひまわりの黄色、ゼラニウムのオレンジ、そして無数のアリストメリアのピンク

これらが咽び立つような夏の匂いと共にくっきりと浮き立ちます。
ただ、後半までいかないと話者である「私」が登場しないので、読者はおいてけぼりを
食らうような格好になってしまいます。「私」はもっと前に登場すべきでしょう。
さらに「花と月子」の絵の謎は、謎のまま放置されているため、感情移入ができない
のが本当のところです。もう少し絵の意味について触れてほしかったです。
単に絵が気に入った、だけでは何の説得力もありません。
とはいえこの一枚のポートレートは好ましく私の中に残像を刻みました。

花と月子  へのレス
丁寧なスケッチと言えるこの作品は、まずそのデッサン力/描写力が(ここまでの作品に比して)群を抜いている。

書いた人ならば共有できる感覚と思うが、今目の前にある風景やモノを読んだ人に伝わるように文字に書き起こす作業というのは、非常に筆への負荷が高い。
どこから書いていいものか、どのように表現していいものか、その都度迷うし苦しいものだ(少なくとも私は苦しい)。

このスケッチには描写の端々に作者自身が今確かにそれを眺め、自らの言葉でその対象を都度都度“書き起こし直している”感触がある。

のみならず、その感触に違和感はなく、風景描写として端正な佇まいがあり、一枚画として見事に一連の描写が成立している。

ストーリーという程のものはないが、しかし丹念な描写が積み上げられた結果、爽やかな読後感がここにはあった。

しかし文章の細部を離れ一歩全体を眺めてみると、丹念な描写とは裏腹に突然主人公は啓示的に『この絵を生涯忘れることはないだろう』と感じており、その感情表現の唐突さ(雑さ)に戸惑いを覚えたのは確か。

画を眺める視線の細部に主人公がその絵を好ましく、美しく感じていることは読み取れるのだが、なぜ“そこまで”主人公がこの絵に惹かれたのかまでは(私には)わからなかった。
なんとなく最後盛り上がって筆が滑って“生涯〜〜”と書いちゃったように感じた。
個人的には“とてもいい”と“生涯忘れない”の感想にはかなりの開きがあるのだが、それとも皆、良い絵を見ると割合生涯忘れないだろうと感じるものなのでしょうか?

いずれにせよ、この作者のもう少し長めのものも読んでみたいな、と思えた。
文章力は確か。その先にでは何を表現できるか、のレベルにあると感じた。


その確かな描写力に8点をつけた。

『仔と仔と月と』に比して1点少ないのは、私の個人的好みとして前者の方に幻想的な詩性を感じたこと、また読者がより少ないだろうことをもって、そこにある種の肩入れの気持ちをもったからで、読者によっては恐らくはこちらの作品の方が好印象であるだろうし、また広く受け入れられる作風であるとも思う。
(ここでの“広く”が実際どの程度“広い”のかは、昨今の小説市場を見ると悲観的な気持ちになるけれど)

これからも頑張ってください。

月 子  作者:ヤマモト  へのレス
俺の好きなドラマ沙粧妙子の『梶浦』みたいでいい感じ。

月子の思いで  へのレス
月子係という発想は、漫画やラノベでは良くあるパターンです。

周囲から浮いているヒロインを、面倒見が良いか、押しつけられてもイヤといない主人公が相手をする事になるという。

>>“テンポよくすること”以上の欲が作品にないように感じ、そこが残念だった。

テンポ良く読めるという事を第一に考えたのは確かです。
前に書いた話が歯切れの悪い、ガチガチな文章だったので。

>>そうした悪意
無いですから。

 しかし、自分で書いておいてなんですが、森見登美彦を目指していたら、西尾維新になってしまったでござるの巻でした

月 子  作者:ヤマモト  へのレス
肉体と精神、存在と電脳空間といった攻殻機動隊を思わるモチーフに加え、全体に医者の悲痛な想いが匂い、面白く読むことができた。

電脳空間にだけフォークロア的に生き延びる(ほぼ)死んでしまった誰かの記憶と、残された精神の依り代に寄り添うマッドサイエンティストの佇まいには、哀しみや静けさが漂いそこは良いと思った。

ただ一方で、SFものはどうしてもアイデアや切り口の斬新さが求められるものだが、道具立て全般は既視感に溢れたものであると思う。

その意味ではこの作品からは作家性(作者自身の匂い)は感じなかった。

そこはマイナスなのだが、しかし一方でこの“月子祭り”自体をメタに物語化したことは評価したいと思った。

というのも、私自身がこうして“月子”という実在の人物が好き勝手に(この作品を含め)沢山の作品にいじられていく様に、この作品を読んで妙なおかしみを感じるようになったからだ。

最初は内輪臭がキツイお題だなぁとも思ったが、こうして作品が一定集まっていくのを見ると、誰もが月子という人物のペルソナをいじくり倒し、また、いじられる当人もそのことを見て、(外からは)平然としているように落ち着いて(また、面白がって)評論しているように見える。

この空間ではいじる側、いじられる側の双方の合意のもと、“月子”はストーキングされたり、脳みそだけになったり、赤ん坊になったりしている。

一歩引いてみてみると、何とも不思議な心持になる。
今さらながらこのお題はこのお題でなかなか面白い要素があったのだな、と感じた。
そのこと考えさせるきっかけをこの作品は私に提供してくれたように思う。
(毎回これ系だと嫌だけど)


文章に破綻なく場面場面にある種の美しさが一定あるものの、しかし明確な作家性は感じなかったものの、この“月子祭り”という全体を作品化したことを鑑み(8点寄りの)7点とした。

ただ作品全体に漂うある種の悲しみのようなものがもう少し全面に出ていれば、8点にしていたと思う。

月子の思いで  へのレス
地の文はリズムよく、相当にテンポを気にして磨かれている。
恐らくは作者自身の生来のリズムに合うよう言葉を並べられており、そのために非常に読みやすく、スラスラと最後まで読み終えることができる。

しかし一方で、1.の感想にもあるが全体のエピソードとしては過去の平板な回想以上のものはなく、例えるなら『70円のオレンジを買うために100円を出したところ30円のお釣りが返ってきました』という文章に似て、読者としては一読後「そうなのですね」としか言いようがなかった。

“テンポよくすること”以上の欲が作品にないように感じ、そこが残念だった。

また、『いや、それはないけど』という月子のキャラクターを引き立たせる良いセリフがある一方、それ以外の会話には(個人的に)うまく入っていけなかった。

これ程自由に開けっぴろげに性的な話題を性に興味津々な童貞処女が相互監視し合う中学校のクラス内で可能なのか、よくわからなかったのだ。
(個人的には)リアリティに欠けるように感じた。

感覚的にこうした会話は童貞処女を脱した19歳くらいの会話のように感じた。(が、まぁそこは個人の経験にも依存するだろうから、私には違和感があったというに過ぎないかもしれない)

全体としてテンポよくあるものの、印象としては平板。

しかし、読むうちに、もしかしたら作者の意図は全く別にあるのではないか、と思わなくもなかった。

恐らくは社会性に欠けた(障害のある?)月子と現在の月子とを重ねることで、「お前(ネット上の月子)は頭の弱い奴なんだぞ」と個人的な侮辱をしているのでは?という読み方である。

そのように読み返してみると、この平板な文章が逆にサイコパス的な雰囲気を醸し、恐ろしげな様相を見せ始める。


……と思わなくもなかったが、しかしさすがに私の考え過ぎに思えたし、仮にそうした読みが作者の意図通りであったとしても、そうした悪意は好きにはなれない。

悪意のない文章であると解釈した上で、文章表現はいいものの、その平板さをもって5点とした。

空の子  作者:もりそば某  へのレス
>>4さんへ>>1です。
横からすいません。私が言いたかったのは用語や日常会話として成立していない
ということではなく、この小説上で使うのには馴染まない、ということです。
言葉が足りなかったのかも知れません。

月 子  作者:ヤマモト  へのレス
肉体を失ってまでも生き続ける月子――。安定した文章から、ややSFチックな
展開は、読み手の興味をそそります。
しかし、それに反してエピソードがほぼ皆無です。
ここはやはりとっておきのエピソードを創るべきでしょう。
震災時の月子との触れ合いなり会話なりも盛り込めたはず。
また、月子本人の行動なり言葉なりをもう少し紹介してほしかったです。
しかし後半、巨大掲示板との関わりは、なるほどと思わせる展開。

>彼女の肉体はもうこの世には存在していない。
>だが、彼女自身の存在が消え果ててしまったわけではない――。

この飛躍が面白かったです。安定した文章で書かれた喪失の物語。
なかなかに読ませる一篇でした。

 

月子の思いで  へのレス
まず、文章が非常に読みやすいです。滞りなくすらすらと読めてしまいます。
おそらく、作者さんは書き慣れた方なんだと思われます。
月子の思い出は小さなユーモアとともに淡々と語られていきます。

>僕は全裸で街中を歩き回る趣味や、ネットに自分の陰部を撮影した画像や動画を流出させる
>と言った性的嗜好の持ち主ではなく、
>「クリトリスとスカトロってどことなく似た雰囲気の響きじゃない?」
>「似てねーよ。 合ってるところが一つもないよ」

月子係、という発想も面白いです。
語り口の軽妙さがこの作品の大きな美点となっています。
ただ、月子の思い出はとりたてて事件らしいものもなく、ひたすら淡々とすぎて
いくだけで、特出すべきものが見当たりません。
それがこの作品の弱点となっています。

 

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